この解剖記録の題材は架空企業です。実在の企業・団体とは関係ありません。
この記録の性質:架空企業です。誌面の構造(見出しの型・対象の幅・導線の並び)は、同業の実在サイトの観察をもとに再構成しています。特定の1社を写したものではなく、地域・規模・固有の表現は変えてあります。
東邦精密工業(架空)
検索語を並べた見出しと、太い見積の導線。その間に「何を、どのくらいの量から、どんな図面で引き受けるか」が無い誌面を解剖します。検索で初めて社名を見た人が、見積依頼のボタンを押す前に何を確かめたいのかを見ます。
- 解剖所見
- 加工法は全部書いてあるが、得意なことが見出しに無い。
- 横断所見
- 「フライス加工 ○○市」と検索して初めて社名を見た人は、加工法の一致は最初の画面で確かめられます。しかし「単品1個を、手描きに近い図面で頼めるか」という自分の案件の可否は、どこにも書かれていません。確かめる手段が見積依頼しかないので、条件の分からないまま依頼を送るか、送らずに離れるかの二択になります。届く依頼に材質も数量も無いのは、読み手の不注意というより、誌面が「条件を書いてから送る」ように設計されていないためだと読めます。得意領域が説明文にだけあることは、検索エンジンには伝わっていて、人には伝わっていない状態です。
- 1ページだけ直すなら
- 1か所だけ選ぶなら、h1の直下に置く1文です。検索語を並べた見出しは残したまま、その下に「試作・単品・少量多品種が得意です。図面はスケッチでも構いません。1個から承ります」のような、引き受ける範囲と条件を示す1文を足します。ここだけを変えれば、見積依頼に材質と数量が書かれるようになるかを、他の要素を動かさずに観察できます。
ここから下に、この結論へ至るまでの観察の過程(設定 → 誌面 → 事実 → 所見 → 研究員追記)が続きます。
この会社の設定
- 事業
- 産業機械や研究開発機器向けの精密切削部品を受託加工する会社という設定です。単品から少量多品種の試作が得意で、従業員は約30名。創業は40年前で、現在は二代目が経営しています。
- 想定顧客
- 装置メーカーの設計担当と、大学・研究機関の研究者を想定しています。設計担当は加工の可否と精度を、研究者は「図面がきれいでなくても頼めるか」「1個から作ってもらえるか」を先に確認する立場です。
- 現在の集客施策
- 自然検索が最大の入口です。「フライス加工 ○○市」「精密部品 少量」といった検索語で来る人が多く、月数万円の検索連動広告も出しています。製造業のポータルサイトへの掲載と、既存取引先からの紹介が続きます。
- 感じている違和感
- 見積依頼のフォームは月に十数件届きますが、材質も数量も書かれていない依頼や、1回きりで終わる依頼が増えました。返信に時間がかかるわりに受注につながらず、サイトが「合う人」を連れてきているのか分からない、というのが現在の違和感です。
解剖対象の誌面
この誌面は解剖のために作成した架空サイトの想定です。実在するサイトではありません。
【金属加工・樹脂加工・精密部品加工】なら東邦精密工業|フライス加工・旋盤加工・マシニング加工は○○市の東邦精密へ!
アルミ・ステンレス・鉄・真鍮・銅、各種プラスチックの精密部品加工。フライス・旋盤・マシニング・ワイヤ放電・各種NC加工に対応。法人様・研究機関様・個人様の部品加工のご依頼を承ります。
- 01メインビジュアル(工作機械の写真1枚。上に検索語を並べた見出し)
- 02対応加工法の一覧(フライス/旋盤/マシニング/ワイヤ放電/NC・各30字)
- 03対応材質の一覧(金属7種・樹脂5種)
- 04お見積依頼について(依頼方法の説明・約400字)
- 05製作事例(写真8点。品名と材質のみ)
- 06設備紹介(機種名と台数の表)
- 07現場だよりブログ(最新3件)
- 08会社概要(所在地・電話・営業時間)
機械が読み取った事実
| ページタイトル | 【金属加工・樹脂加工】なら東邦精密工業 | フライス加工・旋盤加工・マシニング加工の精密部品加工なら○○市の町工場 |
|---|---|
| 見出し(h1) | 「【金属加工・樹脂加工・精密部品加工】なら東邦精密工業」(タイトルとほぼ同文) |
| 見出し(h2)の数 | 1つ。内容はh1の言い換え(加工法の列挙+地域名) |
| 説明文(meta description) | 「単品〜少量多品種の試作部品や研究開発機器の部品を切削加工」の記載あり。この記述は見出しには現れない |
| 対象顧客の明示 | 「法人様・研究機関様・個人様」。業種・案件の規模による絞り込みは確認できず |
| 価格・料金の表示 | 確認できず |
| 電話番号の記載 | あり(ヘッダーと会社概要) |
| CTAの文言と数 | 5種・トップページ内に7か所。うち見積依頼に関するもの3か所、事例1か所、ブログ1か所 |
| 見積前に示されている条件 | 「お見積依頼について」に依頼方法の記載あり。最小ロット・図面の形式・材料支給の可否・標準納期の記載は確認できず |
| 製作事例の掲載 | 8件(品名と材質。用途・数量・納期の記載なし) |
| 実績の数値表現 | 確認できず(創業年・取引社数などの数字は本文に無い) |
| 更新を示す表記 | あり(ブログ最新投稿が観測日の前月) |
| 本文の文字数 | 約2,000字 |
| 画像の代替テキストの設定率 | 100%(全画像に設定あり) |
- 所見1加工法は全部書いてあるが、得意なことが見出しに無い。
- 所見2誰向けかが「法人・研究機関・個人」で、絞っていない。
- 所見3見積の入口は太いのに、見積の前に知りたい条件が無い。
「フライス加工 ○○市」と検索して初めて社名を見た人は、加工法の一致は最初の画面で確かめられます。しかし「単品1個を、手描きに近い図面で頼めるか」という自分の案件の可否は、どこにも書かれていません。確かめる手段が見積依頼しかないので、条件の分からないまま依頼を送るか、送らずに離れるかの二択になります。届く依頼に材質も数量も無いのは、読み手の不注意というより、誌面が「条件を書いてから送る」ように設計されていないためだと読めます。得意領域が説明文にだけあることは、検索エンジンには伝わっていて、人には伝わっていない状態です。
マーケティングの流れ(8段)
- ▸市場・顧客
対象は部品加工を外注したい人全般と読めます。「法人・研究機関・個人」と広く、案件の規模や業種による絞り込みは確認できませんでした。
根拠:説明文と本文に「法人様・研究機関様・個人様の部品加工」の記載があります。装置メーカー向け、試作向けといった絞り込みの語は見出しにありません。
- ▸伝える課題
読み手の困りごとへの言及は確認できませんでした。伝えている内容は「何が加工できるか」に集中していると読めます。
根拠:見出しと最初の3ブロックは、加工法の列挙・材質の列挙・設備の表です。「1個から頼めるか」「手描きの図面でもよいか」など、依頼する側の状況に触れた記載は確認できませんでした。
- ▸約束する価値
約束は「幅広い加工法と材質に対応できる」ことと読めます。得意な領域(単品・少量・試作)は説明文にはあるものの、誌面の見出しには出ていません。
根拠:meta descriptionに「単品〜少量多品種の試作部品」の記載があります。h1・h2・各ブロックの見出しは加工法と材質の名称で構成され、得意領域を示す語は確認できませんでした。
- ▸その根拠
根拠は製作事例の写真と設備の一覧で示されていると読めます。事例に用途・数量・納期が無いため、読み手が自分の案件と照らし合わせる材料は限られます。
根拠:製作事例8件は品名と材質のみです。設備紹介は機種名と台数の表です。精度・納期・対応ロットの数値は確認できませんでした。
- ▸流入経路・広告
入口は検索が中心と伺えます。見出しの構成は検索語を拾うために組まれていると読め、検索で来た人を受ける役割をタイトルとh1が兼ねています。
根拠:タイトル・h1・h2がいずれも「加工法の列挙+地域名」の形です。設定資料に「フライス加工 ○○市」等の検索語で来る人が多い旨の記載があります。
- ▸Web上の受け皿
来訪した人が最初に受け取るのは、加工法の名前の列挙です。「自分の案件を頼めるか」を判断する材料は、画面を数回送った先の「お見積依頼について」まで現れません。
根拠:最初の画面はh1(加工法の列挙)と機械の写真です。依頼方法の説明は4番目のブロックにあり、そこにも最小ロット・図面形式の記載は確認できませんでした。
- ▸期待する行動
期待している行動は見積依頼と読めます。導線は太い一方、見積依頼の前に読み手が知りたい条件が示されていないため、条件の分からないまま依頼が届く構造になっている可能性があります。
根拠:CTA7か所のうち3か所が見積依頼です。「お見積依頼について」に最小ロット・材料支給・標準納期の記載は確認できませんでした。設定資料には「材質も数量も書かれていない依頼が増えた」とあります。
- ▸計測する指標
何を計測しているかは、外部からは読み取れませんでした。見積依頼の件数は把握されていると伺えますが、その先(返信・受注)との対応は判断の材料がありません。
根拠:サイト上に計測に関する記載を確認できませんでした。設定資料に「月十数件の見積依頼」の記載がありますが、経路別・受注別の内訳はありません。
- ▸競合との違い
他社との違いは「対応できる加工法と材質の幅」で示されていると読めます。単品・少量・試作という、実際には差になりうる領域が見出しに出ていないため、幅の広さだけが伝わる構成です。
根拠:見出しは加工法と材質の列挙です。「単品」「少量多品種」「試作」の語はmeta descriptionにのみあり、本文の見出しと製作事例には確認できませんでした。
1ページだけ直すなら
1か所だけ選ぶなら、h1の直下に置く1文です。検索語を並べた見出しは残したまま、その下に「試作・単品・少量多品種が得意です。図面はスケッチでも構いません。1個から承ります」のような、引き受ける範囲と条件を示す1文を足します。ここだけを変えれば、見積依頼に材質と数量が書かれるようになるかを、他の要素を動かさずに観察できます。
確認できた事実
プログラムが機械的に読み取った内容です。
見出し(h1・h2)はいずれも加工法の列挙と地域名で、得意領域を示す語はmeta descriptionにのみあります。対象は「法人・研究機関・個人」と広く、CTA7か所のうち3か所が見積依頼です。見積前の条件(最小ロット・図面形式・標準納期)と価格の表示は確認できませんでした。
考えられる仮説
- ▪見出しが検索順位のために組まれ、人が読む順番としては整理されていない可能性があります。検索で来る人は増えたが、来た人が判断できない、という状態と読めます。
- ▪条件不足の見積依頼が増えている一因として、誌面が「条件を書いてから送る」設計になっていないことが考えられます。何を書けばよいかが分からないまま、フォームだけが目の前にある状態です。
- ▪得意領域が見出しに無いため、単品・試作を頼みたい人と量産を頼みたい人の両方が同じ入口に来ている可能性があります。返信の手間が増えるわりに合わない案件が混じるのは、この構造で説明できる部分があります。
別の可能性
その仮説が外れているとしたら。
- ▪検索順位を維持するために、見出しの形をあえて変えていない判断が社内にある可能性があります。その場合、見出しを触らずに直下へ1文を足す方法が現実的です。
- ▪個人や学校からの小口の依頼が、実際には売上や紹介の入口として機能している可能性があります。対象を絞る前に、経路別の受注を確かめる必要があります。
- ▪条件の記載が無いのは、案件ごとに条件が変わるため書けない、という現場の事情による可能性があります。その場合は「目安」として幅で示す方法が考えられます。
確認すべきデータ
- ▪直近3か月の見積依頼を、材質・数量の記載あり/なしで分けたときの件数と、それぞれの受注率
- ▪検索経由で来た人が、最初の画面からどこまで見て離れているか
- ▪受注した案件の数量の分布(1個・10個・100個以上の割合)
- ▪「お見積依頼について」のページの閲覧数と、見積依頼の送信数の比
最初に試すこと
h1の直下に、引き受ける範囲と条件を示す1文を足し、見積依頼フォームに材質と数量が書かれる割合が4週間で変わるかを見る、という試し方が考えられます。見出しそのものは動かさないため、検索順位への影響は小さいと見込めますが、切り離せると断定はできません。
今は断定できないこと
- ▪実際の受注のうち、検索経由がどの程度を占めるかは、外部からの観察では分かりません。
- ▪得意領域を見出しに出したときに、量産の引き合いが減ることが望ましいかどうかは、経営の判断に属します。
- ▪画像の代替テキストが全て設定されていますが、装飾画像の空altも正しい設定に含むため、この数字から運用の頻度や姿勢は判断できません。
この6部構成は、当研究所のすべての観察記録で共通です。根拠のない点数は出しません。LABOの約束 →
AIが読めていること、読めていないこと
「得意なことが見出しに無い」という指摘は、実務の感覚と合います。町工場のサイトで検索語を並べた見出しが残っているのは珍しくなく、多くはSEO業者の型がそのまま定着したものです。検索には効いている。だから外せない。その結果、人が読む順番が置き去りになります。所見が「見出しは残して直下に足す」としているのは、この事情に沿った現実的な線です。
一方で、AIが読めていない事情もあります。「1個から承ります」と書くことは、書いた瞬間に小口の依頼を増やす行為です。現場が量産で埋まっている時期には、これは歓迎されません。得意領域を出すかどうかは、Web担当者ではなく製造の責任者が決める話になります。
画像の代替テキストが全て設定されている点は、画像まわりが手入れされている兆しと読めます。ただし装飾画像に空のaltを付けるのも正しい設定なので、この数字だけで運用の姿勢は判断できません。言えるのは、直すべきが情報の順番であって、担当者の努力ではないということです。「サイトが古い」と一括りにすると、社内で通りません。
実務なら、どこから動かすか
最初に着手するのは、直近の見積依頼を「材質・数量の記載あり/なし」で分けることです。記載ありの依頼の受注率が高ければ、誌面に条件を書かせる設計が効く根拠になります。この数字を先に出しておくと、製造責任者への説明が「感覚」から「件数」に変わります。
見出しを直すのは後回しにします。検索順位への影響を確かめる手段が社内に無いことが多く、変えた直後に順位が動くと、原因の切り分けができなくなります。h1直下の1文と、見積フォームの入力欄(材質・数量・図面の有無を選ばせる)の2点で、まず4週間見ます。
巻き込む相手は、製造の責任者と、見積を返信している担当者です。「何を引き受けて、何を引き受けないか」を言葉にする作業なので、Web担当者だけでは決められません。ここを省くと、書いた条件と現場の対応が食い違い、次の改修で元の表現に戻る往復が起きます。
この所見が外れているとしたら
所見は「検索で来た新規の見込み客が、誌面を見て依頼を判断している」という前提に立っています。この前提が外れる条件があります。受注の大半が既存取引先の追加発注と紹介で、検索経由の受注が年に数件という場合、誌面を直しても数字は動きません。
もう一つ。個人や学校からの小口の依頼が、実は紹介や採用の入口になっている会社があります。この場合、対象を絞ることは入口を閉じることになります。着手前に、直近1年の受注を経路別・数量別に並べておくと、この判断は分かれます。数字を見ずに「絞る」と決めると、失うものが見えないまま進むことになります。
追記はスパークルの研究員によるものです。AIの所見と区別して掲載しています。
同じ観察を、あなたのサイトでも実行できます。 自動での観察に含められない社内の事情まで含めて考えたい場合は、相談室へどうぞ。