この解剖記録の題材は架空企業です。実在の企業・団体とは関係ありません。
この記録の性質:架空企業です。誌面の構造(見出しの型・実績の示し方・導線の並び)は、同種のSaaSの実在LPの観察をもとに再構成しています。特定の1社を写したものではなく、製品名・数値・固有の表現は変えてあります。
WorkFlowly(架空)
機能で語り、実績の数字の範囲が曖昧で、資料と問い合わせが並列に置かれた広告用LPを解剖します。「比較」で検索して来る人と、「承認が遅い」という困りごとで来る人では、必要な言葉が違います。機能の連打がどちらに届き、どちらに届かないかを見ます。
- 解剖所見
- 見出し6本のうち5本が「自動」で、困りごとの言葉が1つも無い。
- 横断所見
- 「ワークフロー システム 比較」で来る人は、すでに導入を決めていて製品を選んでいる段階です。この人には機能の列挙が効きます。一方、「承認が遅い」「稟議に時間がかかる」という困りごとから検索して来る人は、まだ導入を決めていません。この人が最初の画面で見るのは、自分の状況とは無関係に見える「自動化」の連打と、範囲の分からない数字です。「自分の話だ」と思う前に、機能の理解を求められます。資料ダウンロードはこの層に効くはずの導線ですが、問い合わせと並列に置かれているため、「まだ問い合わせる段階ではない」と感じた人ごと離れている可能性があります。資料を送っても反応が薄いのは、ダウンロードした人の多くが比較段階の人で、機能表を既に持っているためだと読めます。
- 1ページだけ直すなら
- 1か所だけ選ぶなら、最初の機能見出しの直前に置く1ブロックです。「承認に何日かかっていますか」「差し戻しは月に何回ありますか」のような、読み手の現状を指す問いを2〜3行置きます。機能の見出しはそのままで構いません。この1ブロックがあるだけで、困りごとで来た人が「自分の話だ」と判断してから機能を読む順番になります。資料ダウンロードの後の反応率が4週間で変わるかを観察できます。
ここから下に、この結論へ至るまでの観察の過程(設定 → 誌面 → 事実 → 所見 → 研究員追記)が続きます。
この会社の設定
- 事業
- 中小企業向けの業務ワークフロー管理サービスという設定です。申請・承認・進捗管理をブラウザ上で行えます。創業4年で、有料アカウントは400社規模。同じ会社が経費精算と請求書処理のサービスも提供しており、3製品を合わせた導入社数は3,000社という設定です。
- 想定顧客
- 従業員50名から300名の企業で、紙とメールによる申請作業に時間を取られている総務・情報システム担当を想定しています。導入を決めるのは担当者ではなく、その上長や役員であることが多い立場です。
- 現在の集客施策
- 「ワークフロー システム 比較」などの検索連動広告が中心で、この解剖対象は広告専用のLPです。加えて比較サイトへの掲載、業界メディアへの記事出稿、月2回のオンラインセミナーを行っています。
- 感じている違和感
- LPからの資料ダウンロードは毎月一定数あります。ただし、資料を送ったあとに反応がある割合が低く、問い合わせに進んだ案件も「他社と何が違うのか」から説明が始まります。広告費をかけて集めた人に、何が伝わっているのか分からない、というのが現在の違和感です。
解剖対象の誌面
この誌面は解剖のために作成した架空サイトの想定です。実在するサービスではありません。
(h1なし。タイトルは「WorkFlowly | 柔軟な承認ルートと使いやすさで意思決定を加速」)
直感的な操作で誰でも使える申請・承認ワークフロー。スマホ対応、チャットツール連携で外出先でも即承認。グループの経費精算・請求書処理と連携し、申請から支払いまでを一気通貫で管理します。
- 01メインビジュアル(画面イメージ。「導入3,000社」「継続率99%」「承認時間30%短縮」の3数字)
- 02申請業務を自動化するAI搭載ワークフロー
- 03申請業務の自動化までの流れ(3ステップ)
- 04請求書や領収書からAIが申請を自動作成
- 05申請の一次チェック・承認を自動化
- 06自社規定に合わせて承認経路を自動分岐
- 07予算超過を自動検知して内部統制を強化
- 08導入事例(3件・「製造業A社」等)/料金/セキュリティ認証バッジ
機械が読み取った事実
| ページタイトル | WorkFlowly | 柔軟な承認ルートと使いやすさで意思決定を加速 |
|---|---|
| 見出し(h1) | 確認できず(h1タグなし) |
| 見出し(h2)の語 | 6つのうち5つに「自動」を含む(自動化/自動作成/自動化/自動分岐/自動検知)。読み手の状況を指す語は確認できず |
| 実績の数値表現 | 「導入3,000社」「継続率99%」「承認時間30%短縮」。3,000社がこの製品単体か3製品合計かの注記は確認できず。99%・30%の算出条件も確認できず |
| 価格・料金の表示 | あり(月額。最低契約人数の記載は確認できず) |
| 電話番号の記載 | あり(フッター) |
| CTAの文言と数 | 7種・LP内に9か所。資料ダウンロード系3か所、問い合わせ系4か所、パートナー向け1か所。どちらを先に選ぶかの案内は確認できず |
| 導入事例の掲載 | 3件(業種と規模。導入前の状況の記載なし) |
| 第三者認証の記載 | セキュリティ関連の認証バッジ2種 |
| 更新を示す表記 | あり(最終更新が観測日の約15か月前) |
| 本文の文字数 | 約3,800字 |
| 画像の代替テキストの設定率 | 67% |
- 所見1見出し6本のうち5本が「自動」で、困りごとの言葉が1つも無い。
- 所見2実績の数字が、どの範囲の数字なのか分からない。
- 所見3資料と問い合わせが並んでいて、どちらが先かの案内が無い。
「ワークフロー システム 比較」で来る人は、すでに導入を決めていて製品を選んでいる段階です。この人には機能の列挙が効きます。一方、「承認が遅い」「稟議に時間がかかる」という困りごとから検索して来る人は、まだ導入を決めていません。この人が最初の画面で見るのは、自分の状況とは無関係に見える「自動化」の連打と、範囲の分からない数字です。「自分の話だ」と思う前に、機能の理解を求められます。資料ダウンロードはこの層に効くはずの導線ですが、問い合わせと並列に置かれているため、「まだ問い合わせる段階ではない」と感じた人ごと離れている可能性があります。資料を送っても反応が薄いのは、ダウンロードした人の多くが比較段階の人で、機能表を既に持っているためだと読めます。
マーケティングの流れ(8段)
- ▸市場・顧客
対象は申請・承認業務を持つ企業全般と読めます。企業規模や部門を示す語は本文にありますが、見出しにはなく、最初の画面で「自分の会社の話か」を判断する材料は限られます。
根拠:本文に「中小企業」「総務・情報システム担当」の語があります。h2は6つとも機能の説明で、対象を指す語は確認できませんでした。
- ▸伝える課題
読み手の困りごとへの言及は確認できませんでした。見出しはすべて「何を自動化するか」で、「承認が遅い」「差し戻しが多い」「紙が残っている」といった状況の側からの記述はありません。
根拠:h2は「自動化」「自動作成」「自動分岐」「自動検知」で構成されています。困りごとや現状を指す語は、見出しにも最初の画面にも確認できませんでした。
- ▸約束する価値
約束は「申請業務が自動化される」ことと読めます。自動化された結果として読み手の業務がどう変わるかは、「承認時間30%短縮」の1数字に集約されています。
根拠:タイトルは「意思決定を加速」、h2は自動化の列挙です。効果を示す記述は最初の画面の「承認時間30%短縮」のみで、算出条件は確認できませんでした。
- ▸その根拠
根拠は3つの数字と認証バッジで示されていると読めます。「導入3,000社」は設定上、3製品の合計です。LP上にその注記が無いため、読み手はこの製品の数字として受け取ります。
根拠:最初の画面に「導入3,000社」「継続率99%」「承認時間30%短縮」があります。設定資料では3,000社は3製品合計とされていますが、LPに範囲の注記は確認できませんでした。
- ▸流入経路・広告
入口は「ワークフロー システム 比較」等の検索連動広告と伺えます。比較を目的とする人には機能の列挙が対応していますが、困りごとの語で検索する人を受ける記述は確認できませんでした。
根拠:設定資料に検索語の記載があります。LPの見出しは機能で構成され、「承認 遅い」「稟議 時間がかかる」といった困りごとの語に対応する記述は確認できませんでした。
- ▸Web上の受け皿
来訪した人が最初に受け取るのは、画面イメージと3つの数字です。続いて機能の見出しが6つ並びます。「自分の困りごとの話か」を判断する前に、機能の理解を求められる順番と読めます。
根拠:最初の画面は画面イメージと数字3つ、CTAです。2〜7ブロック目は機能の見出しです。困りごとや導入前の状況に触れるブロックは、導入事例(8ブロック目)まで確認できませんでした。
- ▸期待する行動
期待している行動は資料ダウンロードと問い合わせの両方と読めます。9か所のCTAが2系統に分かれ、検討段階によってどちらを選ぶかの案内が無いため、読み手は自分で判断することになります。
根拠:CTAは資料系3か所、問い合わせ系4か所、パートナー向け1か所です。「まずは資料」「導入をご検討中の方は問い合わせ」のような振り分けの記述は確認できませんでした。
- ▸計測する指標
資料ダウンロード数は把握されていると伺えます。ダウンロード後の反応率が低いという違和感は、LPが集めている人の検討段階と、資料の内容が合っていない可能性を示しています。
根拠:設定資料に「資料を送ったあとに反応がある割合が低い」とあります。LP上に、資料の内容(何が書いてあるか)を示す記述は確認できませんでした。
- ▸競合との違い
他社との違いは「AI搭載」と「グループ製品との連携」で示されていると読めます。ただし見出しの「自動」は同種のサービスの多くが使う語で、差として受け取られにくい可能性があります。
根拠:h2に「AI搭載」、本文に「経費精算・請求書処理と連携」の記載があります。他社が使わない言葉や、引き受けない範囲を示す記述は確認できませんでした。
1ページだけ直すなら
1か所だけ選ぶなら、最初の機能見出しの直前に置く1ブロックです。「承認に何日かかっていますか」「差し戻しは月に何回ありますか」のような、読み手の現状を指す問いを2〜3行置きます。機能の見出しはそのままで構いません。この1ブロックがあるだけで、困りごとで来た人が「自分の話だ」と判断してから機能を読む順番になります。資料ダウンロードの後の反応率が4週間で変わるかを観察できます。
確認できた事実
プログラムが機械的に読み取った内容です。
h1はなく、h2は6つのうち5つに「自動」を含みます。最初の画面の数字3つは算出条件や範囲の注記が無く、うち「導入3,000社」は設定上3製品の合計です。CTA9か所は資料系と問い合わせ系に分かれ、振り分けの案内はありません。最終更新は約15か月前です。
考えられる仮説
- ▪見出しが機能で埋まっているのは、製品の開発ロードマップがそのまま見出しになった結果である可能性があります。作る側の順番であって、読む側の順番ではありません。
- ▪資料ダウンロード後の反応が薄い一因として、LPが比較段階の人ばかりを集め、その人たちは既に機能表を持っているため資料に新しい情報が無い、という可能性があります。
- ▪「導入3,000社」を製品単体の数字として受け取った人が、問い合わせ後に実態を知って距離を取る、という経路がある可能性があります。「他社と何が違うのか」から説明が始まるのは、この落差と関係しているかもしれません。
別の可能性
その仮説が外れているとしたら。
- ▪流入の大半が指名検索やセミナー経由で、既に困りごとを言語化した人ばかりなら、機能の列挙は正しい順番である可能性があります。その場合、困りごとの問いを足しても変化は出ません。
- ▪数字の範囲を注記していないのは、広報・法務の表記ルールが未整備なためで、意図的な演出ではない可能性があります。担当者ではなく表記ルールの話になります。
- ▪資料と問い合わせの並列は、どちらでも良いから接点を取りたい、という営業側の要望の反映である可能性があります。その場合、振り分けは営業との合意が先になります。
確認すべきデータ
- ▪LPに来る検索語を「比較・製品名」系と「困りごと」系に分けたときの比率
- ▪資料ダウンロード後30日以内に、再訪・問い合わせ・商談のいずれかがあった割合
- ▪問い合わせ案件のうち、「導入3,000社」の範囲を質問された件数(営業への聞き取り)
- ▪資料の内容と、LPの機能見出しの重複率
最初に試すこと
最初の機能見出しの直前に、読み手の現状を指す問いを2〜3行置き、資料ダウンロード後30日の反応率が変わるかを4週間見る、という試し方が考えられます。機能の見出しと数字はそのままにするので、他の要素の影響を切り離して観察できます。
今は断定できないこと
- ▪実際の流入のうち、比較段階と困りごと段階の人がどの比率かは、外部からの観察では分かりません。
- ▪「導入3,000社」の表記を製品単体に改めるかどうかは、グループ全体の広報方針に属します。
- ▪最終更新が15か月前であることが、成果に影響しているかどうかは、この観察の範囲では判断できません。
この6部構成は、当研究所のすべての観察記録で共通です。根拠のない点数は出しません。LABOの約束 →
AIが読めていること、読めていないこと
「見出しが機能で埋まっている」という指摘は、SaaSのLPでは最もよく見る構造です。開発チームが作った機能一覧が、そのまま見出しになる。作った側は誇らしく、読む側は自分の話だと思えない。所見が「機能の見出しはそのままで、直前に問いを置く」としているのは、開発側の顔を立てながら順番だけ変える、実務で通りやすい線です。
AIが読めていない事情もあります。「導入3,000社」を製品単体の数字に改めると、数字は400社に下がります。競合が万単位の数字を出しているとき、これは営業から強い抵抗が出る変更です。正しさと売りやすさが正面からぶつかる場面で、Web担当者が一人で決められる話ではありません。
資料と問い合わせの並列も、放置されているのではなく、営業が「どちらでもいいから接点が欲しい」と言った結果であることが多い。振り分けを入れると問い合わせが減る、という懸念に答えを用意しないと、この変更は通りません。
実務なら、どこから動かすか
最初に着手するのは、LPに来ている検索語を「比較・製品名」系と「困りごと」系に分けることです。困りごと系が2割を超えているなら、問いのブロックを足す根拠になります。1割以下なら、LPを直すより広告の検索語を見直すほうが先です。この数字を出さずにLPを直すと、効かなかったときに理由が分かりません。
数字の範囲の注記は、後回しにしません。小さな変更で、放置すると信頼の問題になります。「グループ3製品合計」と小さく添えるだけで足ります。営業の抵抗は「注記があるほうが、商談で説明する手間が減る」という形で解きます。
巻き込む相手は、営業の責任者と広告の運用者です。振り分けの導線を入れると問い合わせの数は減り、質が上がります。数が減る局面を営業が先に知っていないと、翌月の会議で「LPを変えたせいで問い合わせが減った」という話になり、元に戻されます。
この所見が外れているとしたら
所見は「困りごと段階の人がLPに来ている」という前提に立っています。この前提が外れる条件があります。広告の検索語が製品名と「比較」だけで、来ているのが比較段階の人ばかりなら、問いのブロックは誰にも刺さりません。この場合、資料の反応率が低いのは、資料が機能表の複製になっていることが原因で、LPではなく資料を直す話になります。
もう一つ。最終更新が15か月前という事実は、このLPが「効いているから触られていない」可能性も示しています。広告の運用者が意図的に固定している場合、動かすと比較対象を失います。着手前に、この15か月のダウンロード数の推移を確かめておくと、この判断は分かれます。数字が安定しているなら、別のLPを作って並走させるほうが、元のLPを直すより安全です。
追記はスパークルの研究員によるものです。AIの所見と区別して掲載しています。
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