研究テーマ:成果の確かめ方
Web広告の数字と、営業現場の感触が一致しない理由
「コンバージョン2倍」と「問い合わせの質が下がった」は両立します。数えている単位の違いと、間にある黒箱を整理します。
- 記事の性質
- 観察の場面は、複数の事例を組み合わせた架空の例です。特定の実在企業を観察したものではありません。
- 想定読者
- マーケティングと営業の両方に関わる管理者
- 著者・確認
- 株式会社スパークル(研究員が確認のうえ公開)
観察
マーケティング担当は報告します。「今月はコンバージョンが2倍になりました」。
営業担当は首をかしげます。「最近の問い合わせ、質が下がっていませんか」。
どちらかが嘘をついているわけではありません。ふたりとも、自分の見ている数字については正確です。それでも話が噛み合いません。
仕組み
原因の多くは、数えている単位の違いにあります。
管理画面が数えているのは「フォームが送信された回数」です。営業が数えているのは「商談として成立した件数」です。この2つの間には、いくつもの工程があります。電話がつながるか。相手に予算があるか。決裁に関われる人か。時期は合っているか。
この間の工程は、多くの会社でどちらの数字にも現れません。マーケティングの管理画面はフォーム送信で終わり、営業の記録は商談から始まる。間が黒箱になっています。
- フォーム送信
- 連絡がつく
- 商談になる
- 見積を出す
- 受注
- ▪ マーケティングが数える:フォーム送信〜フォーム送信
- ▪ 営業が数える:商談になる〜受注
さらに、コンバージョンの定義を広げると(資料請求を足す、簡易フォームにする)、送信数は増えます。増えた分の多くは検討の浅い層なので、営業側の「感触」は薄まります。数字の改善と感触の悪化が、同じ施策から同時に生まれることがあるのです。
よくある誤解
誤解1:どちらかの見方が間違っている。
両方とも正しく、見ている区間が違うだけです。「マーケは水増ししている」「営業は数字を読めない」という個人への評価に変わった時点で、構造の話ができなくなります。
誤解2:KPIを統一すれば解決する。
単位の違いは、統一しても消えません。フォーム送信と商談成立は別の出来事であり、両方を数える必要があります。統一すべきなのは指標ではなく、間の工程を両者が同じ表で見られる状態です。
確認方法
月次の集計ではなく、案件単位で1枚の表を作ってみてください。
| 工程 | 件数の例 |
|---|---|
| フォーム送信 | 20 |
| 連絡がついた | 14 |
| 商談になった | 6 |
| 見積を出した | 3 |
| 受注 | 1 |
この表があると、「コンバージョンが2倍」という報告は「表の1行目が2倍」という意味に変わります。どの行までその増加が届いているかを見れば、数字と感触の食い違いは、議論ではなく観察の対象になります。
小さな実験
直近のコンバージョン10件に、営業側の一言評価を付けてみてください。「商談化した」「連絡がつかない」「時期が合わない」「対象外だった」。
10件で傾向は断定できませんが、マーケティングと営業が同じ10件を一緒に見ること自体に効果があります。互いの数字がどこで途切れているかが、初めて共通の風景になります。
持ち帰れる確認項目
- フォーム送信〜受注を案件単位で1枚の表にする
- 直近のコンバージョン10件に、営業の一言評価を付ける
適用できない条件
- 営業工程が無く、フォーム送信が受注と同義の事業
関連する研究ノート
このテーマの観察は、SPARKLE MARKETING LIBRARY Vol.1 として書籍にまとめています。
書籍『広告を見た人は、どこへ行ったのか。』(Amazon) ↗