無料相談が逆に怖く見える理由
無料であることは、警戒を下げるとは限りません。相手が何を恐れているかを言葉にします。
観察
トップページの目立つ位置に、大きなボタンがありました。「まずはお気軽に無料相談」。色は目立ち、位置も悪くありません。それでも、あまり押されていませんでした。
ボタンの先のページを開くと、書かれているのは3行だけでした。
- 初回無料
- オンライン可
- 所要60分
何を話すのか、何を持っていけばいいのか、終わった後どうなるのかは書かれていません。ページを見た人が最後に残した言葉は、こうでした。
「無料って書いてあるけど、これ断りにくくなるやつでは」
無料であることが、警戒を下げるのではなく、警戒の理由になっていた形です。
仕組み
無料が下げるのは、金銭の障壁だけです。相談を申し込むときに読み手が越えるものは、他にもあります。
- 時間 — 60分は、社内の予定表を1つ埋める長さです
- 対人 — 話を聞いた後で断る手間。断れない性格の人ほど、この費用を高く見積もります
- 開示 — 自社の状況を、外の人に話すことになります
- その後 — 終わった後に何が来るのか。ここが最も読めません
さらに、無料であること自体が予測を呼ぶことがあります。相手も仕事でやっている以上、どこかで対価を得ているはずだ、と考えるのは自然です。その対価がどこで発生するかが説明されていないと、読み手は自分で想像します。想像された対価は、たいてい実際より重くなります。
もうひとつ、「相談」という言葉の幅の広さがあります。この語は、雑談から本格的な診断までを全部含みます。何を持っていくべきか、何を聞かれるか、その場で契約の話になるのか。どれも分かりません。中身の分からない予定は、予定表に入れにくくなります。
「お気軽に」という言葉は、この不明確さを解消しません。気軽さは、書き手が宣言するものではなく、読み手が中身を読んで判断するものだからです。
よくある誤解
誤解1:「無料」と大きく書けば障壁が下がる。
下がるのは金銭の障壁だけです。他の4つはそのまま残ります。文字を大きくしても、残った障壁の大きさは変わりません。
誤解2:「しつこい営業は一切ありません」と書けば安心してもらえる。
安心につながることもあります。一方で、読み手がまだ考えていなかった可能性を、こちらから先に提示する形にもなり得ます。「しつこい営業」という語を読んだ後で、それを思い浮かべずに読み進めるのは難しいためです。どちらに転ぶかは、書き方と読み手によって変わります。断定はできませんが、打ち消しの言葉より、実際の進み方を書くほうが確実性は高くなります。
誤解3:無料をやめて有料にすれば本気の人だけが来る。
たしかに件数は絞られます。ただしそれは、金銭の障壁を上げただけで、時間・対人・開示・その後という4つの障壁には手を付けていません。有料にしても中身が書かれていなければ、同じ理由で見送られます。
確認方法
- 無料相談のページに、次の4つが書かれているかを見ます。所要時間、当日の流れ、その場で決めなくてよいこと、終わった後の連絡の有無
- 申し込みから最初の連絡までにかかっている時間と、その手段(メールか電話か)を確認します。電話が来ると思われている場合、それが申し込みを止めていることがあります
- 実際の相談で、最初の10分に何を話しているかを営業担当に聞きます。その内容がそのまま、ページに書ける「当日の流れ」になります
小さな実験
ボタンの文言は変えず、その先のページに、当日の流れを4行だけ足します。
- 現在の状況を伺います(15分)
- こちらから見えている点をお伝えします(30分)
- 進め方の選択肢を整理します(15分)
- その場でお決めいただく必要はありません
書くのは、実際にやっていることだけにします。やっていないことを書くと、初回の相談で食い違いが出ます。
足した後で見るのは、申し込み数だけではありません。申し込んだ人が当日どんな準備をしてくるかも見ます。資料を用意してくる人が増えたなら、その4行は「何を話す場か」を伝えたことになります。