研究テーマ:顧客・社内の意思決定
導入担当者が、社内で説明しやすい資料とは
目の前の担当者を説得するのではなく、担当者が社内を説得するのを助ける。資料の「持ち帰り性能」という軸の話です。
- 記事の性質
- 観察の場面は、複数の事例を組み合わせた架空の例です。特定の実在企業を観察したものではありません。
- 想定読者
- 展示会・商談後の資料を作る営業・マーケティング担当者
- 著者・確認
- 株式会社スパークル(研究員が確認のうえ公開)
観察
展示会のブースで、話が盛り上がったとします。相手の担当者は前のめりで、「これはうちの課題そのものです」とまで言ってくれた。名刺を交換し、資料を渡し、良い手応えのまま終わりました。
それきり、連絡が来ません。
担当者の熱が冷めたのでしょうか。そうとは限りません。よくあるのは、担当者は会社に戻って上司に話した、そしてうまく説明できなかった、という経過です。
仕組み
BtoBの購買では、あなたが説得する相手と、導入を決める場が別です。目の前の担当者を説得するゲームではなく、担当者が社内を説得するのを助けるゲームだと捉えると、資料の役割が変わります。
社内に持ち帰った担当者は、こんな質問を受けます。いくらかかるのか。今のやり方と何が違うのか。他社はどうしているのか。失敗したら誰が責任を取るのか。
売り込み用の資料は、この質問群に答えるようには作られていません。魅力を伝える文書と、社内の質問に耐える文書は、別の設計だからです。担当者は熱意だけを手に、根拠の再構成を独力でやらされることになります。多くの場合、そこで力尽きます。
- 展示会で盛り上がる
- 担当者が持ち帰る
- 上司の質問「いくらで、何が変わるの?」
- 答えられないここで静かに止まる
- 稟議
- 受注
よくある誤解
誤解1:熱意が伝われば、あとは進む。
担当者の熱意は、社内では根拠として扱われません。「なぜそれが必要か」を、担当者本人の言葉で、数字と比較つきで話せる状態にして初めて、熱意は前に進む力になります。
誤解2:資料を渡してあるのだから、社内で回覧されるはずだ。
回覧されたとしても、読まれるのは数分です。実際には担当者が口頭で要約し、質問に即答できるかどうかで印象が決まります。つまり資料の本当の読者は、資料を読む人ではなく、資料をもとに話す人です。
確認方法
自社の提案資料を、こういう問いで読み直してみてください。
「これを受け取った人は、上司からの『で、いくらで、何が変わるの?』に、このページを見せるだけで答えられるか」
答えに使えるページが1枚もない資料は、担当者の社内戦を支援していません。良い資料かどうかとは別の軸で、持ち帰り性能という軸があるのです。
小さな実験
資料の最後に「社内でよく出る質問と、その答え」を1枚足してみてください。費用の目安、導入期間、既存のやり方との違い、やめる場合の条件。担当者がそのまま流用できる形にします。
どんな質問が出るかを先に洗い出したいときは、決裁者の反対意見シミュレーターに企画の説明文を入れると、社長・経理・現場・法務などの立場からの反対が一覧になります。相手の社内で起きることを、こちら側で先に体験しておく道具です。
持ち帰れる確認項目
- 上司の「いくらで、何が変わるのか」にページ1枚で答えられるか
- 社内でよく出る質問と答えの1枚を足す
適用できない条件
- 担当者本人が決裁権を持つ購買
根拠・参照
- 決裁者の反対意見シミュレーター(/tools/objection-simulator)