研究テーマ:顧客・社内の意思決定
研究開発・現場・購買。同じ資料の違う読まれ方
BtoBの資料は転送され、立場の違う読み手に拾い読みされます。全員向けに書くのではなく、居場所を分ける考え方です。
- 記事の性質
- 観察の場面は、複数の事例を組み合わせた架空の例です。特定の実在企業を観察したものではありません。
- 想定読者
- BtoBの提案資料を作る人
- 著者・確認
- 株式会社スパークル(研究員が確認のうえ公開)
観察
1通の製品資料が、送り先の会社の中を移動していく様子を想像してください。
最初に受け取った技術担当者は、測定原理と限界条件のページで止まります。転送された製造現場の担当者は、段取り替えの手間と設置条件を探します。最後に回ってきた購買担当者は、価格の記載と、供給が安定している会社かどうかを見ます。
- 技術担当原理と限界条件
- 製造現場段取りの手間と設置条件
- 購買価格と供給の安定
同じ資料が、3人にまったく別の文書として読まれています。そして3人のうち誰かひとりでも「自分の問いへの答えがない」と感じると、話はそこで止まることがあります。
仕組み
BtoBの資料は、1人に読まれて終わりません。社内を転送され、立場の違う複数の読み手に、それぞれの関心で拾い読みされます。
| 読み手 | 探しているもの | 不安 |
|---|---|---|
| 技術・開発 | 原理、限界条件、検証データ | 本当に性能が出るのか |
| 現場・製造 | 導入の手間、既存設備との相性 | 仕事が増えないか |
| 購買・管理 | 価格、納期、供給の安定性 | この会社と取引して問題ないか |
1つの文書ですべての読み手に同じ深さで答えようとすると、全員にとって「長いのに、自分の知りたいことが薄い」資料になります。必要なのは全員向けに書くことではなく、誰がどこを読めばよいかが分かる構造です。
よくある誤解
誤解1:決裁者に向けて書けば、話は通る。
決裁者が乗り気でも、現場の「運用が回らない」という一言で止まることがあります。逆も同じです。BtoBの導入は多数決に近く、反対者を作らないことが賛成者を作ることと同じくらい効きます。
誤解2:技術資料なのだから、技術者が読むはずだ。
最初にWebサイトを開くのは、情報収集を任された若手や、技術部門ではない企画担当であることが少なくありません。最初の読み手が「これは誰に回すべき資料か」を判断できるかどうかも、資料の性能のうちです。
確認方法
自社の主力資料を開き、各ページの余白に「このページは誰向けか」を書き込んでみてください。
全ページが技術者向けなら、現場と購買はこの資料の中に居場所がありません。彼らの問いへの答えは、いま誰が、どの場面で、口頭で補っているのかを確かめてみてください。
小さな実験
資料の冒頭に「立場別のご案内」を1ページ足してみてください。「性能の検証データは3章へ。導入時の設置条件は5章へ。価格と納期の目安は7章へ」という道案内だけのページです。
中身を書き換えずに、3人の読み手それぞれに「自分向けの部分がある」ことを最初に伝えられます。転送された資料が社内で迷子にならないための、最も安い手当てです。
持ち帰れる確認項目
- 資料の各ページに「誰向けか」を書き込む
- 冒頭に、立場別の読み方案内を1ページ足す
適用できない条件
- 意思決定者が1人で完結する小規模な購買