研究テーマ:技術・価値の伝わり方
技術資料は正しいのに、なぜ売れないのか
正しさが足りないのではありません。読み手の問いにつながっていない、読む人が一人ではない、担当者が社内で説明できない。理由は3つに絞れます。
- 記事の性質
- 研究員の経験則と考えです。例として挙げた資料や数値は架空のものです。
- 想定読者
- 技術資料を作る開発部門・製品企画と、それを使う営業
- 著者・確認
- 株式会社スパークル(研究員が確認のうえ公開)
開発部門が作った技術資料には、共通した特徴があります。
正確です。嘘がない。限界条件まで書いてある。作った会社の真面目さが、そのまま出ています。
そして、売れていない。
正しさが足りないのではありません。正しい資料が売れない理由は、研究所の見立てでは3つに絞れます。
理由1:読み手の問いに、つながっていない
資料は「性能の証明」のために書かれます。読み手は「自分の問題が解決するか」を判断するために読みます。この2つは、別の作業です。
スペックが読み手の判断材料になるまでには、段があります。
- 01数値耐熱温度300℃
- 02比較従来品より80℃高い多くの資料はここで止まる
- 03可能になること成形後の冷却待ちを短縮できる
- 04読み手の文脈での意味ライン1本あたり、工程をひとつ減らせる可能性がある
- 05判断材料設備更新の回収期間の計算が変わる
3段目から先は、技術部門だけでは書けません。顧客の工程を知っているのは営業です。だから翻訳は共同作業になります。
共同作業になっていない会社では、翻訳は営業の口の中で毎回行われ、資料にもWebサイトにも残りません。サイトを見た見込み客は、翻訳される前の1段目と2段目だけを見て判断していることになります。
→ 技術資料は正しいのに、なぜ顧客に伝わらないのか/スペックが訴求点に変わるまでの5段階
理由2:読む人が、一人ではない
資料は転送されます。最初に受け取った担当者から、技術者へ、現場へ、購買へ。それぞれ探しているものが違います。
- 担当者誰に回すべきか
- 技術原理と限界条件
- 現場手間と、既存設備との相性
- 購買価格と供給の安定
- 決裁何が変わるのか
全員に同じ深さで答えようとすると、全員にとって「長いのに、自分の知りたいことが薄い」資料になります。要るのは全員向けに書くことではなく、誰がどこを読めばいいかが分かる構造です。
理由3:担当者が、社内で説明できない
いちばん見落とされるのがここです。
目の前の担当者は納得している。展示会で盛り上がった。それなのに、そのあと連絡が来ない。よくあるのは、担当者が会社に戻って上司に聞かれ、答えられなかった、という経過です。「で、いくらで、何が変わるのか」。
売り込むための資料と、社内で説明するための資料は、別物です。後者を渡していない会社が、驚くほど多い。
正しさを削らずに直す
3つに共通していることがあります。どれも、資料の正しさを削れとは言っていません。
数値はそのままで、その数値が何を可能にするかを足す。1つの資料のままで、立場別の入口を足す。売り込みの資料に、社内でよく出る質問と答えを1枚足す。全部「足す」です。
技術者が積み上げた正しさは、その会社のいちばんの資産です。削るのではなく、届く形に翻訳する。それがこの研究テーマでやっていることで、TECH ROUTEの実務でやっていることでもあります。
自社の資料が、どの段で止まっているか。まずは伝わり方チェックに製品ページのURLを入れてみてください。最初の画面が1段目で止まっているか、3段目まで届いているかは、それで見えます。
持ち帰れる確認項目
- 主力製品のスペック3つを5段に置き、何段目まで書けているか
- 資料の各ページが誰向けか
- 社内でよく出る質問と答えの1枚があるか
適用できない条件
- 価格だけで決まる規格品・汎用品
根拠・参照
- TECH ROUTE(技術の市場化支援)の実務
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