研究テーマ:顧客・社内の意思決定
難しい商材ほど、認知→興味→理解→購買では進まない
教科書の矢印は、買い手が一人で理解できる商品のための図です。難しい商材では興味の前に理解の一部が要り、その理解は買い手の中では起きません。
- 記事の性質
- 研究員の経験則と考えです。例として挙げた商材は架空のものです。
- 想定読者
- BtoB製造業・技術サービスのマーケティング担当者、営業責任者
- 著者・確認
- 株式会社スパークル(研究員が確認のうえ公開)
マーケティングの教科書には、認知→興味→理解→購買という矢印が載っています。
この研究所では、この図を使いません。難しい商材では、この順番で進まないからです。
「興味」は、分かったあとにしか湧かない
この図の前提は、買い手が一人で「理解」の段階を通過できることです。缶コーヒーなら通過できます。飲めば分かる。
耐熱300℃の樹脂はどうでしょうか。認知はされます。展示会で看板を見る、広告が目に入る。では次に興味が湧くかというと、湧きません。何ができるものか分からないものに、人は興味を持てないからです。
順番が逆なのです。難しい商材では、理解の一部が先に来て、それから興味が生まれます。「うちのあの工程で使えるかもしれない」と思えて初めて、資料を読む気になる。
- 認知
- 興味分からないものに興味は湧かない
- 理解
- 購買
「理解」は、買い手の中で起きない
もうひとつあります。教科書の図では、理解は買い手の頭の中で起きます。難しい商材では、そうなりません。
担当者は自分では判断できず、社内の技術者に聞きます。技術者は原理は分かるが、自社の工程に当てはめられるかは現場に聞く。現場は「今のやり方と何が違うのか」を売り手に聞き返す。
理解は、買い手の中ではなく、売り手と買い手の間で、何往復かしてできあがります。
この往復に売り手が参加していないと、理解は途中で止まります。止まった案件は、管理画面には「離脱」としか残りません。
- 看板・広告を見る認知
- 「関係あるか?」の判定自分では決められない
- 社内の誰かに聞く技術 → 現場
- 売り手に聞き返すここで初めて翻訳される
- 比較と稟議社内で説明できるか
- 購買
教科書の図が悪いのではない
念のため書いておきます。認知→興味→理解→購買の図は、間違っていません。買い手が一人で理解できる商品には、いまも正確に当てはまります。
問題は、難しい商材にこの図を当てはめて、認知(つまり広告費)を増やせば下まで流れると考えてしまうことです。上を増やしても、2段目で切れていれば、切れる量が増えるだけです。
研究所の見立てでは、難しい商材で最初に直したほうがいいのは、認知の量ではありません。「関係あるか?」の判定を、買い手が自分でできる状態にすることです。最初の画面で、誰の、どの困りごとの話かが分かること。それだけで、2段目の切れ方が変わります。
この研究テーマで見ていくこと
この記事は「技術の翻訳」という研究テーマの入口です。ここから先は、切れる場所ごとに1本ずつ書いています。
- 資料は正確なのに届かない理由 → 技術資料は正しいのに、なぜ顧客に伝わらないのか
- スペックが判断材料に変わるまでの段 → スペックが訴求点に変わるまでの5段階
- 資料が社内で転送されるときに起きること → 研究開発・現場・購買。同じ資料の違う読まれ方
- 担当者が上司に説明できないと止まる話 → 導入担当者が、社内で説明しやすい資料とは
自社のサイトが2段目で切れているかどうかは、伝わり方チェックにURLを入れると見られます。「何の会社か」「誰向けか」が最初の画面から読み取れるか。それが、いちばん安い確かめ方です。
持ち帰れる確認項目
- 自社サイトの最初の画面で「誰の、どの困りごとの話か」が分かるか
- 理解の往復に、売り手が参加できる導線があるか
適用できない条件
- 買い手が一人で理解できる商品(消費財・汎用品)
根拠・参照
- 購買行動モデル(AIDMA等)との対比。一般的な教科書の図を出発点にしています