研究テーマ:顧客・社内の意思決定
稟議で止まる提案には、何が書かれていないか
決める人は、うまくいった場合の話より、うまくいかなかった場合の話を探しています。何もしなかったら・やめるなら・誰の仕事が増えるか。提案書に無い4つの問い。
- 記事の性質
- 観察の場面は、複数の事例を組み合わせた架空の例です。特定の実在企業を観察したものではありません。
- 想定読者
- 提案書を作る営業担当者と、社内で稟議を書く担当者
- 著者・確認
- 株式会社スパークル(研究員が確認のうえ公開)
観察
稟議が止まるとき、はっきり「却下」と言われることは多くありません。
「もう少し検討しよう」「来期に回そうか」。
差し戻された担当者には、提案書のどこが足りなかったのかが分かりません。製品の説明は書いた。費用も書いた。期待できる効果も書いた。
止まった提案書を、決める人の側から読み直すと、書かれていないものが見えてきます。
仕組み
決める人の仕事は、良い提案を通すことだけではありません。あとで「なぜ通したのか」と聞かれたときに、答えられるようにしておくことも仕事です。
だから決める人は、うまくいった場合の話より、うまくいかなかった場合の話を探します。何もしなかったらどうなるのか。途中でやめたら、いくら失うのか。誰の仕事が増えるのか。
売る側が作る資料には、この話が入りません。売る側にとっては、書きたくない話だからです。
担当者は、売る側の資料をもとに稟議書を書きます。元の資料に無いものは、稟議書にも入りません。
提案書に書いてあること
- 何ができるか
- 期待できる効果
- 費用
- 導入の日程
決める人が探していること
- 何もしなかったら、どうなるか
- 途中でやめたら、いくら失うか
- 誰の仕事が増えるか
- なぜ来期ではなく、今期なのか
よくある誤解
誤解1:効果を大きく書けば通る。
効果が大きいほど、決める人は「本当か」と考えます。
効果の数字を2倍に書くより、「効果が見込みの半分だった場合でも、2年で元が取れます」と書くほうが、決める人の探している答えに近づきます。
誤解2:決める人は、中身を理解していないから止める。
理解していないから止めるのではありません。引き返し方が見えないから止めます。製品の説明をもう一度ていねいにしても、この不安は消えません。
確認方法
止まった提案書を1つ開きます。次の問いに答えているページがあるかを探します。
- 何もしなかった場合、1年後に何が起きているか
- 始めたあとでやめるなら、いつまでに、いくらで引き返せるか
- 誰の仕事が、どのくらい増えるか
- なぜ来期ではなく、今期なのか
1枚も無ければ、決める人は、この4つの答えを自分で想像して決めています。想像は、たいてい悪いほうへ傾きます。
小さな実験
提案書に「見送った場合」のページを1枚足します。
脅す文にはしません。いまのやり方を続けた場合にかかる時間と費用を、相手の会社の数字で書きます。「月末の集計に、いま3人で2日。1年で72人日」。
その隣に、やめ方を書きます。「最初の3か月は月ごとの契約です。合わなければ、初期費用だけで終われます」。
決める人がほかに何を聞きそうかは、決裁者の反対意見シミュレーターで先に集められます。企画の説明文を入れると、社長・営業・経理・現場・法務・情シスの6つの立場からの反対が並びます。実在の人の発言ではなく、想定です。
持ち帰れる確認項目
- 何もしなかった場合の1年後が書いてあるか
- やめるときに、いつまでに・いくらで引き返せるかが書いてあるか
- 誰の仕事がどのくらい増えるかが書いてあるか
- なぜ今期なのかが書いてあるか
適用できない条件
- 決める人が一人で、その人と直接話せている商談
根拠・参照
- 決裁者の反対意見シミュレーター(/tools/objection-simulator)
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