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EXPERIMENT実験室2026-09-193分で読めます

研究テーマ:顧客・社内の意思決定

稟議で止まる提案には、何が書かれていないか

決める人は、うまくいった場合の話より、うまくいかなかった場合の話を探しています。何もしなかったら・やめるなら・誰の仕事が増えるか。提案書に無い4つの問い。

記事の性質
観察の場面は、複数の事例を組み合わせた架空の例です。特定の実在企業を観察したものではありません。
想定読者
提案書を作る営業担当者と、社内で稟議を書く担当者
著者・確認
株式会社スパークル(研究員が確認のうえ公開)

観察

稟議が止まるとき、はっきり「却下」と言われることは多くありません。

「もう少し検討しよう」「来期に回そうか」。

差し戻された担当者には、提案書のどこが足りなかったのかが分かりません。製品の説明は書いた。費用も書いた。期待できる効果も書いた。

止まった提案書を、決める人の側から読み直すと、書かれていないものが見えてきます。

仕組み

決める人の仕事は、良い提案を通すことだけではありません。あとで「なぜ通したのか」と聞かれたときに、答えられるようにしておくことも仕事です。

だから決める人は、うまくいった場合の話より、うまくいかなかった場合の話を探します。何もしなかったらどうなるのか。途中でやめたら、いくら失うのか。誰の仕事が増えるのか。

売る側が作る資料には、この話が入りません。売る側にとっては、書きたくない話だからです。

担当者は、売る側の資料をもとに稟議書を書きます。元の資料に無いものは、稟議書にも入りません。

提案書に書いてあること

  • 何ができるか
  • 期待できる効果
  • 費用
  • 導入の日程

決める人が探していること

  • 何もしなかったら、どうなるか
  • 途中でやめたら、いくら失うか
  • 誰の仕事が増えるか
  • なぜ来期ではなく、今期なのか
fig.01提案書に書いてあることと、決める人が探していること。決める人は、うまくいかなかった場合の話を探している。

よくある誤解

誤解1:効果を大きく書けば通る。

効果が大きいほど、決める人は「本当か」と考えます。

効果の数字を2倍に書くより、「効果が見込みの半分だった場合でも、2年で元が取れます」と書くほうが、決める人の探している答えに近づきます。

誤解2:決める人は、中身を理解していないから止める。

理解していないから止めるのではありません。引き返し方が見えないから止めます。製品の説明をもう一度ていねいにしても、この不安は消えません。

確認方法

止まった提案書を1つ開きます。次の問いに答えているページがあるかを探します。

  1. 何もしなかった場合、1年後に何が起きているか
  2. 始めたあとでやめるなら、いつまでに、いくらで引き返せるか
  3. 誰の仕事が、どのくらい増えるか
  4. なぜ来期ではなく、今期なのか

1枚も無ければ、決める人は、この4つの答えを自分で想像して決めています。想像は、たいてい悪いほうへ傾きます。

小さな実験

提案書に「見送った場合」のページを1枚足します。

脅す文にはしません。いまのやり方を続けた場合にかかる時間と費用を、相手の会社の数字で書きます。「月末の集計に、いま3人で2日。1年で72人日」。

その隣に、やめ方を書きます。「最初の3か月は月ごとの契約です。合わなければ、初期費用だけで終われます」。

決める人がほかに何を聞きそうかは、決裁者の反対意見シミュレーターで先に集められます。企画の説明文を入れると、社長・営業・経理・現場・法務・情シスの6つの立場からの反対が並びます。実在の人の発言ではなく、想定です。

持ち帰れる確認項目

  • 何もしなかった場合の1年後が書いてあるか
  • やめるときに、いつまでに・いくらで引き返せるかが書いてあるか
  • 誰の仕事がどのくらい増えるかが書いてあるか
  • なぜ今期なのかが書いてあるか

適用できない条件

  • 決める人が一人で、その人と直接話せている商談

根拠・参照

  • 決裁者の反対意見シミュレーター(/tools/objection-simulator)
この話を自分のサイトで確かめる

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